Chief blog塾長ブログ

2022.01.25

子どもが受験期の保護者の方へ

年齢を重ねることも悪くない。もちろん体力も落ちるし、人生のゴールである死も近づいてくるけど、人生を俯瞰できるようになる。子どもが高校を卒業すると、その気持ちは強くなる。「当事者」から「第三者」になることは、視点が「虫」から「鳥」になる。ちょっと寂しいことではあるが、いまの立場としては悪くない。

いまから20年ほど前、山王教育研究所で生涯発達心理学(人間は一生成長を重ねていくので、「発達心理学」ではなく「生涯発達心理学」という呼び方が適切だといわれた)を勉強した。1年間のコースで通うのも大変だったが、生徒援助だけでなく自分の人生の理解にずいぶんと役に立った。

エリク・H・エリクソンという生涯発達心理学者が人生の課題を次の8段階に分けた。

  1. 乳児期(生まれてから1~2歳まで)
  2. 幼児期(3~4歳まで)
  3. 遊戯期(小学校入学まで)
  4. 学童期(小学校・中学校時代)
  5. 思春期(中学校~大学時代、20代)
  6. 成人期(30~40歳まで;人によって大きく異なる)
  7. 壮年期(仕事の引退の頃まで)
  8. 老年期(それ以降)

人生は必ず終わりを迎えます。そのときに「生きていて良かった」と思えるような人生を私は送りたいし、子どもにも送ってもらいたいし、生徒にも送ってもらいたい。私は仕事として、「4.学童期」「5.思春期」の生徒と携わってきた専門家であり、実践家です。私の専門は「英語教育を通じて、生徒の成長をサポートしていく」です。ですから、「勉強ができるようになればいい」「英語が分かるようになればいい」と思うだけで、当塾に来るのはあまりおすすめしません。

4.学童期の課題は集団の中で生きていく方法を学ぶこと。自分の思い通りにすべて進むのではなく、社会のルールや規範性の中で過ごし、勉強や部活動などの活動を最後まで行うことが大切な時期です。勉強や部活動は結果ではなく、最後までやり続けられたかどうか、が大切です。

5.思春期では「自分は何者であり、社会の中での役割は何か、自分はどう生きていくべきか」を考える時期です。自分の内面と向かい合うので、もちろん親との会話は減りますし、同じ課題を持っている友人とのコミュニケーションも深まります。この時期は、親は口を出さずに見守ることが大切です。親が口を出しすぎると子どもが自立できなくなります。「教育熱心」と思われている親ほど口を出し、親子関係が悪化するのは、それが結果的に子どもの自立を阻害してしまうからです。

私は高校の教員として18年間、担任をしていた。教育学を学び、心理学(エリクソンやアドラー心理学など)も学び、どんなクラスでもまとめてきたという自負もある。その専門家としていえることは、親の役割は子どもそのものを大切にすることだ。○○中学校に合格した子ども、有名高校・大学に通う子ども、誰もがうらやむ企業に就職した子ども。そんな修飾は必要ない。生まれてきたときに「無事に生まれてきてくれてありがとう」という思いで、子どもそのものを愛することが大切なのではないか。もし、修飾の方が大切だという親御さんがいるならば、そういう人と私は共通の言葉はない。人間は誰にも価値がある。あなたにも、私の同じ価値がある。学歴や勤め先で価値が決まるなんて、そんな奴隷みたいな人生観はごめんですね。

子どもを有利なポジションに移動させたいという気持ちは分かる。それが親心ですからね。しかし、親がそんなことをすればするほど、子どもにとっては悪影響。親がすべきことは、子どもの安全を守ることと見守ることです。失敗をしたら、失敗を責めるのではなく、それまでの努力を評価する。失敗体験を通じて、様々なスキルは身についてくる。人間万事塞翁が馬。これから長い人生を送るわけですから、これで人生が終わるわけじゃない。

成功したら、一緒に喜びましょうよ。それでも喜びの原点はそれまでの努力です。結果はうれしいけど、それ以上に「いままでよく努力してきたね」と評価したいし、そうすれば次回のチャレンジでも結果ではなく、その過程を大事にでき、そしてこれがいちばん結果への近道であることは大人の皆さんは分かっているはずです。

世の中には、ごまんとエセ専門家がいる。教育は、エビデンスを見つけにくいし、人生観と深くつながりがある。私の人生観や教育観と相容れない人は、ご自分の人生観や教育観で子育てをすればいいだけで、私が「エセ専門家」と思う人は、私を「エセ専門家」と思うのは、ニーチェ流にいえば、同じことなのでしょうけど。

自分の人生は自分で選び、自分で責任を取っていく。そんな教育が子どもに大切なのであり、受験というのは子どもが自分の人生と向き合う良い機会なのではないかと私は思います。その時期の子どもを見守ることが親の役割です。それに、数年たてば、「あの頃、なんであんなに悩んでいたのだろうか」となりますから。