Chief blog塾長ブログ

2024.11.25

「定員内不合格」について

「定員内不合格」が話題になっていました。「定員内不合格」とは、倍率が1倍以下にも関わらず不合格にさせるということです。倍率が1.0倍を切っているのに、どうして不合格を出すのだということに対しての問題提起(批判?)の記事でした。

これには、学校をどの角度から見るかで考え方が変わります。

学校を「これから社会に出て行く若者を教育していく」という視点で見れば、不合格にさせることはおかしいですよね。公的な若者の教育機関は学校しかないわけですから、定員的には可能であるのに、その若者の教育を学校が放棄する=不合格にさせるという発想は不合理であるということです。しかしこの視点に立つならば、社会は若者の失敗に寛容でなければなりません。タバコやバイク程度に目くじらを立てられてもこまりますし、電車の中でうるさい、駅でのマナーが悪いと学校にクレームは入れるべきではない。また、都道府県の教育委員会は「定員内不合格」を出しやすい学校、はっきりいれば学力的に低い学校には30%以上は多くの教員を配置して、きめ細かい指導ができるようにしなければならない。学力指導もしなければいけないし、生活指導もしなければいけないし、特別指導(停学)の時の先生方の負担は大きいですよ。「どんな若者でも受け入れて、しっかりと教育していく」ということにはコストがかかります。

その一方で、学校内の安全を優先させるのであれば、定員内不合格になんら問題はないでしょう。現役時代に私が経験した「定員内不合格」は、「昼休みにタバコを吸った」「試験の途中で、無断で学校から出て行った」というものでした。少年院に入っていた生徒が入学後にトラブルを引き起こしたり、近隣の学校を中途退学した生徒が入学後に私服警官が学校にやってくるような犯罪行為を引き起こしたりもしていました。学校の安全性を最大限に求めようとするならば、入学時に可能な限りルールを守らない受検生は入学させるべきではない。「教育的配慮」というものと真逆の発想です。学校は「生徒が勉強すること」「誰しもが安全に過ごせること」のふたつが大切です。規律を破ることが予想される生徒が入学したために、まじめに頑張っている生徒の安全性が損なわれたり、学習の機会が奪われるような事態を避けるのであれば、定員内不合格は当然のことです。

この中で、東京都と埼玉県の教育委員会の担当者は次のように述べています。

  • 点数がほとんど取れていなくても定員内であれば入学許可を出す。高校は学力が十分でなくても、入学後、社会に出ていく力をつけられるようにしっかり指導しなければならないと認識している(東京都)
  • 入学を希望する人を定員内なのに不合格にする理由はない。県として県民のニーズに応える(埼玉県)

両方の教育委員会は前者の立場のようです。そういう担当者が定員内不合格が起こる学校で勤務をしたのかは分かりませんが、建前論ではなく、学校も生徒も「支える」サポートをしていることを願っています。