2025.09.09
学校推薦・総合型選抜による入学者は年々増加しています。文部科学省の資料によれば、すでに私立大学の入学者の60%以上が、一般入試の学力検査ではなく、推薦や総合型選抜を通じて入学しています。保護者世代、とくに50代以上の方にとっては「隔世の感」があるかもしれません。「総合型選抜? AO入試はどうなったの?」と感じる方も少なくないでしょう。
かつて存在した「一芸入試」と比べれば、学校推薦も総合型選抜も大きな進歩です。例えば、高校入試でも一時期「一芸」を披露する方式がありました。楽器の演奏なら理解できますが、野球経験のない生徒に素振りをさせたり、円周率を途中まで暗唱させたりと、首をかしげるような光景もありました。そうしたものと比べれば、現在の入試はずっと妥当性があります。
「学校推薦」は高校での学習や活動の成果を評価する制度です。一方、「総合型選抜」は受験生の適性や意欲を大学で生かしてもらいたいという、大学側の期待が込められた制度です。両者は「一芸入試」とは異なり、大学での学びに直結する資質を見ようとしています。
ただし、最近気になる情報を目にしました。YouTubeでとある学習塾の動画を見たところ、「偏差値が低くても総合型選抜なら有名大学に合格できる!」と宣伝されていたのです。実際には、そのような低い学力水準で多数の合格者を出すことは難しいはずです。大学の先生方も決して甘くはありません。小手先のテクニックで突破できるほど入試は単純ではないでしょう。
具体例を挙げれば、千葉工業大学は入試で数学Ⅲを課していません。しかし大学の公式データによると、留年・退学率は約7%に上ります(2012年時点では約17%でした)。特に数学Ⅲを必要とする学科では、さらに高い数字になっている可能性が十分に考えられます。理系大学では、学ぶために必要な知識が明確です。文系大学の場合も、必要なのは「学ぶ姿勢」です。学力があっても真剣に学ぶ意欲がなければ苦労しますし、偶然合格できてもその後の大学生活が充実するとは限りません。
そのため、学校推薦では評定平均が重視され、総合型選抜では「あなたは何者で、大学で何を学びたいのか、社会でどんな役割を担いたいのか」が問われます。そして大学で学ぶ姿勢を測る指標のひとつが、英検などの資格試験です。
これから推薦・総合型選抜の比率はさらに高まっていくでしょう。学習塾業界が生徒募集を意識するのは当然ですし、当塾も例外ではありません。ただし教育に携わる者として、「楽に合格できるテクニック」という誤解を与える発信は、百害あって一利なしだと考えます。教育業界に身を置く私たちは、入試制度の本質を踏まえ、生徒に正しいメッセージを伝えていくべきです。