2025.05.03
この三月に長男が大学を卒業し、四月から就職しました。
これで三人の子ども全員が自立したことになります。父親としての役目を果たしたような、少し寂しいような、でもホッとした気持ちもあります。
子育ては本当に難しいものです。
ジレンマの連続であり、そのジレンマと日々向き合っていく作業のようにも思います。
子どもには学力をつけてほしいし、受験では志望校に合格してほしい。できれば、福利厚生が整い安定した企業に就職してほしい。親なら誰もがそう願います。
でも、有名高校や有名大学に進んだからといって、必ずしも幸せになるとは限りません。
職場の人間関係に悩んで心をすり減らしている人もいます。親としてどう導けばいいのか、いつも考えさせられます。
できるだけ苦労はさせたくないと思うのが親心です。
でも私は、成長に下駄を履かせることには慎重であるべきだと感じています。
本来子どもが言うべきことを親が代わりに言ったり、先回りして障害を取り除いたり、時には親の力でトラブルをおさめようとする。そうしたことは、結果的に子どもの自立を妨げることになりかねません。
幼い頃から有名校に入れるという判断の中にも、親の先回りがあるのかもしれません。
人は自分で決めて、自分の人生を歩くものです。
親に道を整えてもらってばかりでは、成長する機会を逃してしまいます。
小さい頃は、ちょっとしたことで「うちの子は天才かも」と思うものです。
車の名前を覚えたり、ひらがなが読めたり、話し始めるのが早かったり。それだけでうれしくなる。私もそうでした。
でもやがて、「うちの子は天才じゃないよな」と気づきます。
まぁ、私たちの子ですから、当然かもしれません。
それでも親は、子どものために心を尽くします。
時間を使い、お金をかけ、日々を過ごします。
子どもが笑ってくれれば嬉しいし、困難を避けてあげたいとも思う。できれば遠回りせずに幸せにたどり着いてほしい。そう願わずにはいられません。
けれど、遠回りこそが人を育てるのだと、私は思います。
うまくいかない経験、思うように結果が出ない悔しさ、自分の力で乗り越えた達成感。
そうした積み重ねの先に、自分の足で立つ強さが生まれます。
そしてそれこそが、子どもたちが生きていくための力になる。
我が子を通して、私自身が学ばせてもらいました。
塾で教えているのは、勉強を通じた自立の訓練です。
できなかったことができるようになる喜び。思うようにいかないときに、あきらめずに工夫して取り組む姿勢。それを大切にしてほしいと願っています。
点数も大事ですが、それ以上に学んでほしいことがあります。
保護者の皆さまには、時に黙って見守ることも、ぜひ大切にしていただけたらと思います。
子どもは親の言葉以上に、その生き方を見ています。
何を大切にしているのか。それは自然に伝わっていくものです。
そして願わくば、いつか子どもたちが、親の愛情や苦労に気づき、感謝できる人になってほしい。
親のありがたさは、大人になってから気づくことが多いものですが、学習塾に来て授業料を出してもらうことを当然と思わずに、感謝してもらいたい。
親が何かしてくれることを当然と思うのではなく、自分がどれだけ愛されているのかということを意識してもらいたいのです。
だから当塾では入会時に、保護者の方には見守ってくれるというに伝え、お子さんには保護者の方に感謝しなさいといっています。