2025.12.15
また、学習塾の倒産に関するニュースが報じられました。責任のなすり合いをしているようですが、ここで学んでいた生徒の皆さんへの影響が最小限であることを祈っています。
今回の話題を「少子化が原因だ」「募集の仕方が悪かった」といった表面的な要因で片づけるつもりはありません。
(ちなみに当塾は株式会社共進の一部門として運営しており、きわめて健全な経営を維持しています。)
むしろ考えたいのは、
「保護者の方はどのような学習塾にお子さんを預けたいと思うのか」、
そして
「一部の学校が授業を学習塾や予備校に委託している現状は本当に適切なのか」
という点です。
学習塾という業種は、資格も免許も不要。スーツを着ていれば教育の専門家に見えてしまう世界です。
営業的に生徒を集め、経営が成り立てば「成功」といわれる。
個人塾は代表者の個性が前面に出ますが、大手ではその顔が見えにくくなります。
「教育を知らなければ、建前で話せばいい」──そんな風潮もあります。
進路指導では人間の成長を考えず、偏差値だけを見て「この高校を受けましょう」と言えば済む。
授業が苦手なら演習を増やせばいい。宿題を多く出せば「やっている感」は出る。
それで“教育”を語ることもできてしまうのです。
どんなに理想を掲げても、生徒が集まらなければ塾は消えていきます。
参入障壁が低い分、撤退障壁も低い。静かに消えていくのです。
そのとき、教育理念も進路指導も、授業の巧拙も関係ありません。
生徒が集まらなければ終わり──それが現実の学習塾です。
いわば、「私立高校の劣化版」のような構造が、業界には存在しています。
塾や予備校にはそれぞれの“カラー”があります。
教科に軸足を置くのか、教育理念に軸足を置くのか、あるいは営業に軸足を置くのか。
ただし、営業中心でありながら
「子どもの教育を第一に考えます!」
というようなきれいごとのコピーを掲げるのは嘘です。
教科中心なら、「教えることで本当に学力が伸びるのか」を問い直す。
教育を軸にするなら、「自分は属人的な学習塾なのだ」と自覚する。
営業と教育の両立は簡単ではなく、その逆もまた然りです。
保護者や生徒の方々にもお伝えしたいのは、
「対策」にばかり頼らないほうがいいということです。
過去問演習は意味がありますが、
大学の先生が「塾に対策されるような問題」を出すでしょうか?
それは大学を過小評価しすぎです。
大学が求めているのは、
「しっかり勉強してきた高校生」であって、
「対策をこなしてきた高校生」ではありません。
実力が伴わないのに“対策”でゴールを目指すのは、そもそも無理があります。
私はこれまで学校と塾の両方を見てきました。
あくまで個人の経験ですが、学校の先生方は総じて優秀です。
ニュースで取り上げられるのは一部の“変わった先生”ばかりですが、
どの学校にも素晴らしい先生が3割はいますし、
さらに「安心して子どもを任せられる先生」が5割はいます。
中高生という扱いの難しい年代を、少人数の教師が教育し、
修学旅行や遠足では「添乗員+教育者」として安全に導く。
不測の事態にも冷静に対応するからこそ、事故がないのです。
超少子化の時代、多くの塾や予備校はこれから倒産・縮小していくでしょう。
しかし、その中でもいちばん子どもを支えてくれるのは学校です。
だからこそ、学校の先生方の人数を増やし、
一人ひとりに余裕を与えて、
放課後や夏休みの補習を学校内で完結できる体制を整えること。
それが、これからの教育に最も必要な改革だと思います。